The Vancouver Asahi
英題:The Vancouver Asahi
日本公開:2014年12月20日
製作国:日本
言語:日本語
画面:シネマスコープ
音響:デジタル
上映時間:133分
配給:東宝

【スタッフ】
監督:石井裕也
脚本:奥寺佐渡子
製作:石原隆
   市川南
プロデューサー:稲葉直人
        菊地美世志
撮影:近藤龍人
照明:藤井勇
録音:加藤大和
美術:原田満生
編集:普嶋信一
音楽:渡邊崇
衣裳デザイン:宮本まさ江
ヘアメイク:豊川京子
セットデザイナー:江口亮太
装飾:石上淳一
VFXスーパーバイザー:西尾健太郎
スクリプター:工藤みずほ
音響効果:小島彩
小道具:徳田あゆみ
持道具:中村敬介
小道具助手:伊藤実穂
キャスティング:元川益暢
エキストラ担当:村山和之
助監督:増田伸弥
制作担当:有賀高俊
ラインプロデューサー:小沢禎二
アシスタントプロデューサー:梶本圭
              西原恵

【キャスト】
レジー笠原(ショート):妻夫木聡
ロイ永西(ピッチャー):亀梨和也
ケイ北本(セカンド):勝地涼
トム三宅(キャッチャー):上地雄輔
フランク野島(サード):池松壮亮
エミー笠原(レジー笠原の妹):高畑充希
トニー宍戸(バンクーバー朝日監督):鶴見辰吾
井上安五郎:光石研
堀口虎夫(タクシー業者):ユースケ・サンタマリア
杉山せい(娼婦):本上まなみ
松田忠昭(「ニューピアカフェ」店主):田口トモロヲ
前原勝男(写真館店主):徳井優
河野義一(理髪店店主):大鷹明良
三宅忠蔵(トム三宅の父):岩松了
江畑善吉(カナダ日本人会会長):大杉漣
笹谷トヨ子(日本語学校教師):宮崎あおい
ベティ三宅(トム三宅の妻):貫地谷しほり
笠原和子(レジー笠原の母):石田えり
笠原清二(レジーの父親):佐藤浩市

螢雪次朗
たかお鷹
高泉淳子
田島令子

藤村周平
芹澤興人
阿部亮平
板橋駿谷
松本竜平
武子太郎
梅澤悠斗
溜口佑太朗
南好洋
今村裕次郎
鏑木海智
中沢青六
宇野祥平
藤原鉄苹
内野智
田村泰二郎
紀伊修平
川屋せっちん
江良潤
佐藤恒治
中野英樹
大家由祐子
原田麻由
伊藤克信
光岡湧太郎
飯田芳
山岡一
廻飛呂男
河原健二
ジジ・ぶぅ
邱太郎
浜田道彦
銭元玉香
東加奈子

吉澤天純
生駒星汰
高橋玲生
吉田まどか

平田敬士
大島璃生
松本祐介
小林海人
貴島康成
渡辺哲史
込江海翔
品川凛生
田中理勇

【ストーリー】
 戦前のカナダ、バンクーバー。そこには移民してきた日本人たちが形成した”日本人街”があった。安い賃金で働き、カナダ人から差別や迫害を受けながらも、いつしかこの地に根を下ろした移民一世たち。そしてカナダで生まれた移民二世も育っていく。その若者たちのために一つの野球チームが結成される。チームの名は”バンクーバー朝日”。彼らはいつしかカナダ人リーグでプレーするようになっていた。
 製材所で働くレジー笠原(妻夫木聡)、漁師のロイ永西(亀梨和也)、レジーと共に働くケイ北本(勝地涼)、家族で豆腐屋を営むトム三宅(上地雄輔)、ホテルのポーターをしているフランク野島(池松壮亮)らバンクーバー朝日の主要メンバーたちは、長時間にわたる過酷な肉体労働を終えると練習のために野球場へと急いだ。疲れ果てた彼らにとって唯一の楽しみ、それが野球だった。しかしカナダ人との体力差は歴然としていて、パワーに押されるバンクーバー朝日の最近の成績は連戦連敗。長年彼らを応援してきた日系人たちにも、新たな野球シーズン到来を前にあきらめムードが漂っていた。厳しい状況に追い打ちをかけるように、チームのキャプテンと主力メンバーが仕事を求めてバンクーバーを離れることに……。そこで、次のキャプテンに指名されたのはレジー。
 彼は職場でカナダ人の上司から差別を受けながらも、白人社会と何とか折り合いをつけて生きていた。一方、移民一世である父・清二(佐藤浩市)は、高齢になっても肉体労働をやめず、今も白人たちに馴染もうともしない。さらに日本の親族に見栄を張りたい一心で稼ぎのほとんどを日本に送ってしまっていた。レジーの妹・エミー(高畑充希)はそんな家族の状況を見ながら、裕福なカナダ人の家でハウスワーカーとして働く傍ら、大学への進学を見据え、奨学生候補になるほど勉学に励んでいた。
 厳しい冬を越すと、新たな野球シーズンが始まる。予想通りバンクーバー朝日は連敗。「やっぱり白人に勝てるわけない。あいつらの腕こんなにぶっとくてさ。まともにやったって勝てない」と、リーグ開始早々に弱音を吐くキャプテン・レジー。しかし連敗続きの最中、レジーは悶々と考えていたある秘策を投じる。それがバントだった。ヒットを狙わず、ボールを転がす。全力疾走で塁に出て、盗塁を重ね、1点をもぎ取ったレジー。チームは負けたものの、バンクーバー朝日に希望の光が差した瞬間だった。その後チームは、バント、盗塁、ヒットエンドラン、スクイズ、俊敏な捕球を徹底し、小回りの利かないカナダ人チームに勝利していく。彼らのプレーは、”ブレイン・ベースボール”と称され、日系人だけでなくカナダ人たちをも熱狂させていった。
 だが強豪チーム”マウント・プレザント”との試合でアクシデントが発生する。ストライクもボールと判定するカナダ人の審判や日々の不当な差別に怒りを募らせていたエース・ピッチャーのロイが、レジーが頭にデッドボールを受けたことに腹を立て、乱闘事件を起こしたのだ。これによってリーグ優勝目前だったバンクーバー朝日は、出場停止の処分を受ける。
 一方で、日系人に対する締め付けも厳しさを増していた。ロイたち日本人漁師は漁業権のライセンスを取り上げられ、エミーも学校の白人父兄の抗議によって奨学生候補から外されてしまう。またフランクもホテルの仕事を解雇され、仕事を求め日本に帰国することに。勤勉な日本人に対する無理解から来る差別、さらには日本と欧米の関係が悪化していることも影響して、日系人たちには生きにくい状況が生まれていった。
 だが、明るい話題もあった。カナダ人も含む人種を超えた多くの野球ファンの抗議によって、バンクーバー朝日の出場停止処分が解けたのだ。リーグ優勝に向けて気持ちを新たにしようとチームのメンバーが集まった酒場で、エミーは日系人たちがどれほどバンクーバー朝日から勇気と希望をもらっているかを涙ながらに語る。その後、ロイとレジーはマウント・プレザントの面々が集まるバーに乗り込み、乱闘事件の非を詫びた。その帰り道、レジーは「やっぱり野球は楽しいよ。色々あるけれど、野球やれるならここに生まれてきて良かったと思う。一緒に行けるところまで行ってみよう」とロイに語りかける。ロイは父親がカナダのために戦って戦死して以来、カナダ人にわだかまりを持っていたが、レジーの温かい言葉を聞いて、思わず涙が頬を伝った。
 家族から孤立していた清二は家に寄りつかないものの、陰ながらレジーたちの活躍を見つめていた。その清二が初めてカナダ人のスポーツ用品店に行き、レジーのためにグローブを買う。「わしにはできんことをお前はやっとる」と言ってグローブを手渡した清二に、レジーは「親父たちがカナダに来てくれたから、俺たちはここにいる。感謝してる」と応えた。
 そして運命のリーグ決勝戦。相手は因縁のマウント・プレザント。球場には溢れんばかりの観客が集まった。試合は互いに譲らず、一進一退の攻防が続く。最終回を迎えて、4対5でプレザントが1点リード。ケイとレジーが塁に出て、ロイがバッターボックスに入る。バンクーバー朝日の最後の攻防が始まる——。