Farinelli
原題:Farinelli Il Castrato
英題:Farinelli
日本公開:1995年06月24日
製作国:フランス/ベルギー/イタリア
言語:フランス語・イタリア語
上映時間:110分
配給:ユーロスペース

【スタッフ】
監督:ジェラール・コルビオ
脚本:ジェラール・コルビオ
   アンドレ・コルビオ
製作総指揮:リンダ・グーテンバーグ
      ドミニク・ジャンヌ
      アルド・ラド
      ステファン・テノ
製作:ヴェラ・ベルモント
脚色:ジェラール・コルビオ
   アンドレ・コルビオ
   マルセル・ボーリユー
撮影監督:ウォルター・ヴァン・デン・エンデ
美術:ジャンニ・クワランタ
衣裳:アンヌ・ド・ローガルディエール
   オルガ・ベルルーティ
編集:ジョエル・アッシュ
音楽監督:クリストフ・ルセ

【キャスト】
カルロ・ブロスキ(ファリネッリ):ステファノ・ディオニジ
リカルド・ブロスキ:エンリコ・ロ・ヴェルソ
アレクサンドラ・レリス:エルザ・ジルベルシュタイン
マーガレット・ハンター:カロリーヌ・セリエ
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル:ジェローン・クラッベ
フェリペ5世:ジャック・ブデ
ニコラ・ポルポラ:オメロ・アントヌッティ
ベネディクト:ルノー・デュ・プルー・ドゥ・サン・ロマン
モエール伯爵夫人:マリアンヌ・バスレール
カウンター・テノール歌手:デレク・リー・レイギン(声の出演)
ソプラノ歌手:エヴァ・マラス=ゴドレフスカ(声の出演)

【受賞歴】
第52回ゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞
第67回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

【ストーリー】
<12年前のナポリ、そして最初の成功>
 ナポリの広場には多くの聴衆がつめかけていた。若きカストラートであるカルロ・ブロスキ(ステファノ・ディオニジ)とトランペット奏者の勝負が行われている。カルロは驚くほど容易にトランペットの音域を超え、完璧で純粋な声を聴衆に披露する。群衆は興奮のあまり彼の名を叫び続けた。
 10歳の時に落馬事故で去勢されてしまった彼にとっては、その純粋で完璧な声こそが唯一の武器であり、存在価値であった。カルロの8歳年上の兄リカルド(エンリコ・ロ・ヴェルソ)は弟の優れた才能に驚嘆し、魔法の声を手に入れたことを悟る。弟の声が乗ったとき、彼の書いた平凡な曲は天が創造した曲となるのだった。リカルドが作曲し、カルロ=ファリネッリが歌う。それは回り続ける回転木馬のように永遠に続くかに見えた。
 10歳の時、熱病でうなされた中での悪夢――落馬事故によってではなく、兄リカルドが彼を去勢する夢。夢とも現実ともつかぬ記憶に彼はおびえ続けてきたが、リカルドはいつもそれを強く否定した。しかし、ナポリでの成功がカストラート(去勢者)であることの劣等感から彼を解放した。この日、ファリネッリ伝説が生まれたのだ。
 英国宮廷の作曲家ヘンデル(ジェローン・クラッベ)は、初めてファリネッリの声を聞いて驚嘆する。ヘンデルはファリネッリに、一緒にロンドンへ来るよう誘う。だが兄リカルドも一緒にというファリネッリの申し出は聞き入れられず、危機を感じ取ったリカルドは、ヘンデルが弟に提示した契約を結ばせようとはしなかった。ヘンデルとファリネッリの運命的な出会いは、ののしりあいに終わる。

<ヨーロッパへ>
 ファリネッリ30歳。あらゆる場所で兄弟は最大の賛辞で迎えられた。美しくも妖しい魅力に溢れたファリネッリの声の魔術にオペラ座は興奮の渦となり、女たちは気を失った。男たちに愛され、女たちに褒めそやされ、ファリネッリを誰もが欲しがった。偉大な作曲家までもが……。
 演奏旅行で二人は一人の女を抱いた。ファリネッリが誘惑し悦びを与え、リカルドが”種をまく”。リカルドが作曲し、ファリネッリが歌うように。寝室の入り口に置かれた真紅のガウンが、”その時”の合図になっていた。
 ドレスデンでファリネッリはヘンデルと再会した。英国宮廷から派遣されたヘンデルは、イギリス国王のためにコヴェント・ガーデン劇場で歌ってほしいと彼に依頼する。ファリネッリは巨額な報酬に驚愕し、高熱とも相まって気を失って倒れる。楽屋に戻った彼は一晩中待ち続けるが、結局ヘンデルは来ない。夢うつつの状態から目覚めたとき、彼の横にはアレクサンドラ(エルザ・ジルベルシュタイン)という若い女がいた。彼女はファリネッリに、一緒にロンドンへ行き、コヴェント・ガーデン劇場に対立する貴族オペラ座(ノーブル・シアター)の壊滅的な状態を救ってほしいと懇願する。こうして兄弟はロンドンへ向かうことになった。ロンドンでは、数カ月前からファリネッリの師であるポルポラ(オメロ・アントヌッティ)が貴族オペラを率いて、ヘンデルと競い合っていた。

<1734年、ロンドン>
 ファリネッリはロンドンに到着するやマーガレット・ハンター(カロリーヌ・セリエ)と会う。マーガレットは貴族オペラの有力なメセナ(庇護者)である。ファリネッリは、彼女の姪のアレクサンドラに情熱的な愛を注ぐ。ヘンデルが監督を務める王立コヴェント・ガーデン劇場とポルポラの率いる貴族オペラ座の競争は日増しに熾烈になっていく。聴衆はファリネッリに熱狂し、貴族オペラ座は人々で溢れかえる。一方コヴェント・ガーデン劇場のビロードの椅子は埃を重ねるばかり。だが一方では、兄の作曲した凡庸なオペラはファリネッリの心をもはや動かさない。彼に必要なのは天才が作曲したオペラであった。例えばヘンデルのような。そのジレンマを感じ取ったアレクサンドラは、ヘンデルの楽譜を盗みファリネッリに捧げる。彼はそのヘンデルのアリアを歌うことを決意する。それはファリネッリとリカルドの関係の終焉でもあった。
 リカルドは弟のために長年書きためていた未完のオペラ”オルフェオ”の完成を決心する。それが弟の心と、自分のプライドをとり戻せる唯一の手段だった。その頃ヘンデルは、リカルドからファリネッリの去勢の秘密を聞く。落馬事故ではなく、兄による策略だったことを……。
 貴族オペラ座での初日、ヘンデルは、盗まれた譜面のアリアを間違いなく歌えるものかとファリネッリを挑発する。さらに彼を動揺させるため去勢の秘密を暴く。しかしファリネッリは絶望の淵からヘンデルのアリアを見事に歌うのだった。それは天から響く声のように聴衆を魅了した。かつてない感動、そしてかつてない美しさ。彼の声が頂点に達した瞬間であった。ヘンデルの曲の美しさ、そしてファリネッリの奇跡の声は幻想世界へと導く魔術となり、ヘンデルもその衝撃的な感動にひたり、自身の負けを悟った。彼は二度とオペラを書かず、ファリネッリも二度と舞台に立つことはなかった。

<1740年、マドリード>
 3年後。スペイン国王フェリペ5世のためだけに歌うことを決心したファリネッリは、少しずつ心の安らぎを見出していた。そんなある日、リカルドがスペイン宮廷にやって来る。リカルドは遂に「オルフェオ」を書き上げたのだ。それは彼の最高傑作であった。だが、ファリネッリはやはり兄を許すことができない。リカルドは自殺を図る。アレクサンドラの愛が、彼に兄を許す力を与え、兄弟愛を甦らせた。彼らは再びかつてのようにひとりの女性を愛し合う。ファリネッリが悦びを与え、リカルドが”種をまく”。
 数ヵ月後リカルドは宮廷を去る。弟との”共作の成果”、つまりアレクサンドラが身籠もった子供を残して……。

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