Bowling for Columbine
原題:Bowling for Columbine
米国公開:2002年10月11日
日本公開:2003年01月25日
製作国:アメリカ・カナダ・ドイツ
言語:英語
画面:ビスタサイズ
音響:SRD
上映時間:120分
配給:ギャガ・コミュニケーションズ

【スタッフ】
監督マイケル・ムーア
脚本マイケル・ムーア
製作マイケル・ムーア
   チャールズ・ビショップ
   ジム・チャルネッキ
   マイケル・ドノバン
   キャサリン・グリン
製作総指揮:ウォルフラム・ティッチー
音楽:ジェフ・ギブス
編集:カート・イングファー

【キャスト】
マイケル・ムーア
チャールトン・ヘストン
マリリン・マンソン
マット・ストーン
ジョージ・W・ブッシュ
ビル・クリントン
クリス・ロック

【ストーリー】
1999年4月20日、アメリカ合衆国は普段通りの穏やかな朝を迎えた。人々は仕事に励み、大統領は国民が名前さえ知らない国に爆弾を落とし、コロラド州の小さな町では2人の少年が朝6時からボウリングに興じている。何の変哲もない予定調和な1日のはじまり…。このあと、2人のボウリング少年が悲劇的事件を起こそうとは、いったい誰が予想しただろう。その日、アメリカは旧ユーゴスラビアのコソボ紛争における最大規模の爆撃を敢行した。その1時間後、あのコロンバイン高校銃乱射事件、別名トレンチコートマフィア事件が起きたのだ。事件の舞台はコロラド州リトルトンのコロンバイン高校。そこの生徒である2人の少年が、高校に乗り込み銃を乱射。12人の生徒と1人の教師を殺害したのち、自殺するという衝撃的なものだった。
この事件は全米を震撼させた。あらゆるメディアが事件の分析を試み、ヒステリックに騒ぎ立てた。映画やTV、ビデオゲームにおけるバイオレンスの氾濫が悪いのだ、家庭の崩壊の産物だ、高い失業率が原因だ、いやアメリカが建国以来たどってきた暴力的歴史のせいなのだ、と。報道はどんどん過熱、犯人が聴いていたという理由からハード・ロック歌手マリリン・マンソンのライブがコロラド州で禁止されるという一幕もあった。
しかし、ビデオゲームは日本の方がよほど進んでいる、家庭の崩壊はイギリスのほうがひどい、失業率はカナダのほうがはるかに高い。なのになぜアメリカだけ銃犯罪が突出しているのだ? なぜ、アメリカだけが銃社会の悪夢から覚めることができないのか? マイケル・ムーアは、その大きな体をゆすりながら、問題の核心に迫るためマイク片手にアポなし突撃取材を敢行していく。彼は問う。「マリリン・マンソンのライブを禁止するのなら、なぜボウリングも禁止しないのか?」

【用語解説】
[無政府主義・アナーキズム(Anarchism)]
権力に屈しない、各個人のインディペンデント精神のこと。アメリカ建国の精神でもあり、中央VS地方という対立の構図としてだんだんと顕在化してきた。本作に登場する連邦政府ビル爆破テロ犯人の弟も、この側面が強い。

[國民の創世(The Birth of a Nation)]
アメリカ映画史上最初の巨匠、D・W・グリフィスが1915年に発表した大作。本作のなかでその映像が短く挿入されている。露骨な白人至上主義的な価値観が反映された作品で、黒人をはじめマイノリティやリベラル派から強い批判を浴びた。

[ボウリング(Bowling)]
映画のタイトルは、コロンバイン高校の事件を起こした少年たちがボウリング部員で、母校を襲いに行く前にも地元でボウリングをしていた事実に由来する。犯人たちがマリリン・マンソンのファンだったため、マンソンはひどいバッシングを受けた。ムーアは問う。「だとするとボウリングはどうなんだ?」

[カナダ(Canada)]
本作において、ちょっとした息抜きとなるのがカナダでのエピソード。アメリカの病的な現状を目の当たりにしてきた後で、「犯罪? 泥棒にあったことがあるけど」と語るカナダ人を見ていると、少々ホッとする。一方、全く正反対なアプローチでカナダを描いているのが『サウスパーク』。まとめると、カナダは安全でのどかだけど、同時にどうしようもなくダサくて、緊張感のない田舎者の国ってこと…?

[アメリカ合衆国憲法(Constitution of the United States of America)]
1789年に施行。「よく統制された国民義勇兵(ミリシア)は自由な国の安全保障にとって必要であるから、国民が武器を所有し、かつ携帯する権利は、これを侵害してはならない」という補正第2条については、解釈を巡る議論が絶えない。

[銃(Gun)]
開拓民であったアメリカ人にとって、銃は生活必需品だった。18世紀末、〈部品互換方式〉によって大量生産が実現し、さらに1830年代、S・コルトが連発式拳銃リボルバーを発明、南北戦争中には多銃身式機関銃が発明され……。アメリカの歴史は銃の発達の歴史でもある。

[ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン(Happiness Is A Warm Gun)]
ビートルズが1968年に発表したアルバム『ザ・ビートルズ(通称:ホワイト・アルバム)』に収録されていたナンバー。本作の前半に使用されている。ジョン・レノンは「動物を撃ったばかりのワクワクする感じ」をイメージし、銃の専門誌の記事から、このタイトルをとった。

[クー・クラックス・クラン(KKK)]
本作のアニメに登場する白いガウンのKKKは、アメリカで組織された人種差別主義的秘密結社。組織自体はすでに解散しているが、政治団体的特色の強い組織として1980年ごろから反ユダヤ・反黒人を叫ぶ白人至上主義運動を再び盛り返した。

[コソボ(Kosovo)]
1989年、セルビア共和国がコソボ自治州の権限を大幅に縮小。これに反発したアルバニア系の人々が「コソボ共和国」の独立を宣言した。しばらく二重権力体制が続いたが、武力衝突が頻発したことから、1999年米国を中心としたNATO軍がセルビアへの爆撃を開始。クリントンは「正義かつ必要な戦争」と自画自賛した。

[ルイ・アームストロング(Louis Armstrong)]
最も偉大なジャズ・ニュージシャンの一人。革新的なトランペッターにして、独特なしゃがれ声で聴衆を魅了する歌い手。アメリカが戦後におこなってきた悪行の数々が列挙されるなか、彼の歌う『What A Wonderful World(この素晴らしき世界)』が流れる。

[民兵、州兵(Militia)]
有事のときのみ正規軍を補うものとして、各州の民兵制度を強化したのが、1792年以降の国民予備軍(州兵)。1916年から正式に連邦政府の管理下に組織され、事実上、正規軍と変わりない。現在、オクラホマの事件をきっかけとして、極右思想の反政府武装組織としての「ミリシア(民兵)」の存在が注目を集めている。

[全米ライフル協会(NRA)]
銃の擁護団体のなかでも最大かつ最強なのがNRA。何度となく盛り上がる銃規制への動きを潰して回るのに大忙し。メンバーの顔ぶれは、歴代の大統領やハリウッドの有名スターが顔を並べており、豪華絢爛。

[オクラホマ(Oklahoma)]
1995年4月19日、オクラホマシティーで大規模な無差別爆弾テロが発生。マクヴェイとニコルズが連邦政府ビルに爆弾をしかけ、死者168人、負傷者500人以上の大惨事となった。犯行動機は、第1に銃規制法への反発。第2にブランチ・デヴィディアン事件が原因とみられている。大量の武器を貯蔵する新興宗教組織ブランチ・デヴィディアンの教団本部を、銃の不法改造などの容疑で政府が急襲。信者80数人が建物に火をつけて集団自殺した。犯人は事件から2年後の同日にあわせて、連邦政府への攻撃を敢行。マクヴェイはすでに処刑され、ニコルズは終身刑。ニコルズの弟ジェームズも共犯として逮捕されたが、不起訴となり、本作のなかでムーアの質問に応じている。

[サウスパーク(South Park)]
1997年8月からアメリカのケーブルTV「コメディ・セントラル」でスタートした大人向けアニメで、コロラド州サウスパーク在住の4人の小学3年生を中心とした物語。壊れたキャラクターによる壊れた言葉や会話。小学生なのに放送禁止用語連発。「アメリカの夢」崩壊後の90年代アメリカを覆った偽善的ワールドをさらなる崩壊へ導こうともくろみ、記録的高視聴率をたたきだした。

[郊外(Suburbia)]
現代アメリカが暴力から逃れるべく見出した最後のフロンティア。ただし、暴力はほどなくこの地も覆い、血生臭い殺戮の舞台となる。アメリカ史の宿命? 開拓民はただ暴力によってのみ新しい領土を手にし、しかも、最悪なことに、もはや私たちに出口はない。

[トッド・ソロンズ(Todd Solondz)]
アメリカ社会におけるあらゆるモラルにツッコミを入れタブーをさらけ出す、かなり危険な映画作家。映画「ストーリーテリング」(2001)の後半部分には、コロンバイン高校の事件に衝撃を受け、現代の高校生の実態を巡るドキュメンタリー映画を撮ろうとする冴えない風貌の映画監督が登場する。

[トレンチコートマフィア(Trench Coat Mafia)]
コロンバイン銃乱射事件の犯人たちが所属していたカルト集団。黒いトレンチコート姿で田舎町を闊歩し、人種差別的な言動を繰り返し、衣服や教科書にナチスドイツを象徴する鉤(かぎ)十字の印をつけ、ネオナチや白人至上主義を気取っていた。
受賞歴
2002年カンヌ国際映画祭:55周年記念特別賞受賞
2002年ナショナル・ボード・オブ・レビュー:最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2002年ラスベガス批評家協会賞:最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2002年フロリダ批評家組合賞:最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2002年サウスイースタン批評家協会賞:最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2002年トロント批評家組合賞:最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2002年バンクーバー映画祭:エア・カナダ賞(グランプリ)受賞
2002年サン・セバスチャン国際映画祭:観客賞受賞
2002年サンパウロ国際映画祭:観客賞受賞
2002年アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭:観客賞受賞
2002年アトランティス映画祭:観客賞受賞
2002年ベルリン国際映画祭:観客賞受賞
2002年ブロードキャスト映画批評家協会賞受賞
2002年シカゴ映画批評家協会賞:最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2002年アメリカ脚本家組合:最優秀脚本賞受賞
2003年ゴールデン・サテライト賞:最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2003年インディペンデント・スピリット賞:最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2003年カンザス・シティ映画批評家協会賞:最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2003年オンライン映画批評家協会賞:最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2003年セザール賞:最優秀外国語映画賞受賞
2003年ダラス・フォース・ワース映画批評家協会賞:最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2003年アメリカ映画編集者協会賞:最優秀編集賞エディー賞受賞
2003年アカデミー賞:長編ドキュメンタリー映画賞受賞

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