NIXON
原題:NIXON
日本公開:1996年02月24日
製作国:アメリカ
言語:英語
画面:シネスコ
音響:ドルビーステレオ・デジタル
上映時間:191分
配給:ブエナビスタ

【スタッフ】
監督:オリヴァー・ストーン
脚本:スティーヴン・J・リヴェル
   クリストファー・ウィルキンソン
   オリヴァー・ストーン
製作:クレイトン・タウンゼント
   オリヴァー・ストーン
   アンドリュー・G・ヴァイナ
共同製作:エリック・ハンブルグ
     ダン・ハルステッド
撮影:ロバート・リチャードソン
プロダクション・デザイナー:ヴィクター・ケンプスター
編集:ハンク・コーウィン
   ブライアン・バーダン
衣装:リチャード・ホーナン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
タイトルデザイン:カイル・クーパー

【キャスト】
リチャード・ニクソン:アンソニー・ホプキンス
パトリシア・ニクソン:ジョアン・アレン
アレクサンダー・ヘイグ:パワーズ・ブース
エヴェレット・ハワード・ハント:エド・ハリス
ジョン・エドガー・フーヴァー:ボブ・ホスキンス
ジョン・N・ミッチェル:E・G・マーシャル
ロナルド・ジーグラー:デヴィッド・ペイマー
ジョン・ディーン:デヴィッド・ハイド・ピアース
ヘンリー・キッシンジャー:ポール・ソルヴィノ
ジョン・アーリックマン:J・T・ウォルシュ
ハリー・ロビンス・ハルデマン:ジェームズ・ウッズ
ハンナ・ニクソン:メアリー・スティーンバージェン
ハロルド・ニクソン:トニー・ゴールドウィン
マーサ・ミッチェル:マデリーン・カーン
トリニ・カルドーサ:ダン・ヘダヤ
毛沢東:リック・ヤン
ゴードン・リディ:ジョン・ディール
リチャード・ヘルムズ:サム・ウォーターソン

【ストーリー】
 1972年6月17日。ワシントン・ウォーターゲート。民主党全米委員会が開かれているホテルの一室に忍び込んだ、キューバ人を含む5人の男性が逮捕された。その知らせを受けたハワード・ハント(エド・ハリス)は至急大統領に連絡しろ、と仲間をせきたてた。
 ワシントン・ホワイトハウス。ハントからの報告が入り、リチャード・ニクソン大統領(アンソニー・ホプキンス)の側近たちはいろめき立った。誰がそんなことを指示したのか……首席補佐官H・R・ハルデマン(ジェームズ・ウッズ)、法律顧問ジョン・ディーン(デヴィッド・ハイド・ピアース)、国内問題顧問ジョン・アーリックマン(J・T・ウォルシュ)らは指示を出したのはどうやら特別弁護人チャールズ・コルソンであるらしいという当たりをつけた。が、大統領関係者が逮捕されたことにどう対処していいのか、いっこうにその打開策を見つけかねていた。
 しかも、5人のうちマッコードという男が大統領再選委員会の警備担当で、元CIAのメンバーであったことが突きとめられ、ハルデマンらを大いに慌てさせたのだった。
 やがて、マッコードら5人だけではなく、彼らの行動をチェックしていたハントと同僚のゴードン・リディにまで捜査の手が及んだ。リディは<鉛菅工グループ(プラマーズ)>という組織に所属していた。プラマーズとはニクソン政権下、米政府極秘情報漏洩を防止するために組織された秘密活動グループだった。
 ハルデマンらはホワイトハウスに内通者がいるのではないか、と疑いを持つようになっていった。そして、ハント自身がリークしたことを突き止めた。彼は、ちょうど1年前に発覚したペンタゴン(米国防総省)極秘事項漏洩事件の首謀者で元役人のエルスバーグと内通していた人物だった。ハントはCIAとも密接な関係にあり、法律顧問ディーンがリディに、ニクソン政権に関連する極秘事項の口止め料を支払っていたことも知っていた。
 やがてハントが、ニクソン政権がCIAとの関係を保つために隠蔽工作した<ビッグス湾事件>の一部始終を握っていることが判明した。それはニクソン政権にとって致命的ともいえるものだった。ビッグス湾事件――61年、ケネディ政権がキューバ侵攻に失敗した事件だった。ニクソン政権となってそのことが公に発覚すればワシントンそのものの信用が失墜すると判断したニクソン自らがCIAと隠蔽工作を行ったのだ。
 リチャード・ニクソンはカリフォルニア・ホウィッティアーで雑貨商を営む貧しいアイルランド系の父フランクと厳格で敬けんなクェーカー教徒である母ハンナとの間に生まれた。5人兄弟の次男。懸命に働きながら大学を出て軍人となり、50年に下院議員選に出馬。トルーマン大統領を激しく非難し、マッカーシー議員のような攻撃的な姿勢で鳴らした。マッカーシーの非米活動委員会で活躍。ニクソンはタカ派陣営にウケはよく、ハト派からは非難ごうごうだった。そして35歳で上院議員となり、39歳でアイゼンハワーの副大統領候補になるまでに至った。
 ニクソンは63年、のちに法律顧問となるジョン・ミッチェル(E・G・マーシャル)と補佐官となるヘンリー・キッシンジャー(ポール・ソルヴィノ)と知り合う。運命的な出会いだった。富豪ジャック・ジョーンズの後ろ盾も得ていた。
 64年のある日、ジョーンズの側近のキューバ人がニクソンに「ケネディが出馬できなければいいんだろ、この世界、何でもありですよ」と囁かれる。ニクソンにはなんのことやらさっぱり分からない。もしかして、そのキューバ人はビッグス湾事件と何か関係でもあるのか?
 63年、ジョン・F・ケネディが暗殺された。ニクソンは思った、確かにこの世界、何でもありだ、と。大統領にリンドン・B・ジョンソンが就任した。そして5年後、ニクソンは次期大統領選に出馬。宿敵はジョン・ケネディの弟ロバート。FBI長官J・エドガー・フーヴァー(ボブ・ホプキンス)は「ニクソンは平気で嘘をつく。だから使えるんだ」とポツリとひと言もらした。フーヴァーはキューバ・シンジケートと関わりを持っていた。彼のそばにはつねにロッセリというシンジケートのボスがいた。ロッセリは<トラック2>を動かす人物でもあった。トラック2……ビッグス湾事件を画策した組織だった。
 68年、ロバート・ケネディが選挙戦の最中、凶弾に倒れた。ニクソンはついに念願だった大統領の椅子に座った。やがて72年2月に中国との国交を回復させるが、直後の6月、ウォーターゲート事件が発覚。パリ平和会談を成功に導きベトナム戦争を終結させたのになぜ俺ばかりが攻撃されなければならないんだ!とニクソンは責めた。
 「ジョンソンだって、ケネディだって、あのルーズベルトだって盗聴をしていたんだ。アイゼンハワーには愛人がいた。それなのにどうして俺だけが……どうして俺だけが世間にいじめられるんだ!」
 それは大統領ニクソンではなく人間リチャード・ニクソンの悲痛な叫び声だった。貧しい家庭に生まれ育ち、政界という世界で泥まみれになっていった男の悲痛な声だった…。

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