rain of light
ビデオ題:光の雨 連合赤軍事件
日本公開:2001年12月08日
製作国:日本
言語:日本語
画面:ヴィスタ
音響:ステレオ
上映時間:130分
製作:シー・アイ・エー
   エルクインフィニティ
   衛星劇場
配給:シネカノン
スタッフ
監督:高橋伴明
製作総指揮:高橋紀成
製作:遠藤秀仡
   石川富康
原作:立松和平(『光の雨』新潮文庫刊)
脚本:青島武
プロデューサー:青島武
        森重晃
音楽:梅林茂
撮影:柴主高秀
照明:渡部嘉
録音:福田伸
美術:金勝浩一
編集:菊池純一
スクリプター:津崎昭子
助監督:瀧本智行
製作担当:小川勝広
スチール:久井田誠
劇中短歌:福島泰樹
筆文字パフォーマンス:軌保博光
キャスト
阿南満也:萩原聖人
上杉和枝:裕木奈江
倉重鉄太郎:山本太郎
玉井潔:池内万作
黒木利一:鳥羽潤
今村道子:小嶺麗奈
月田てる子:板谷由夏
松村伸:西守正樹
夏目洋太:山中聡
大沢守男:松田直樹
戸張真:大柴邦彦
戸張善二:一條俊
谷口淳子:西山繭子
北川準:蟹江一平
五十嵐俊哉:近藤大介
宇野咲子:矢澤庸
岡崎伸江:関川侑希
矢崎マリ:玄覚悠子
赤津利和:佐藤貢三
及川厚志:大和屋ソセキ
森中広志:三上大和
田所良春:恩田括
新川次郎:金子貴俊
河村哲也:白石朋也
高取美奈:高橋かおり
浦川秋子:川越美和
浜田真二:川瀬陽太
三橋信之:金山一彦
大山賢一:塩見三省
樽見省吾:大杉漣
ストーリー
1969年9月4日…羽田空港へとつながる運河に、二人の男が浮かんでいる。”革命共闘”の幹部、玉井潔(池内万作)と夏目洋太(山中聡)だ。滑走路へと投げられた火炎瓶が小さな炎を上げ、夜の闇を赤旗が切り裂く。旗には”反米愛国、安保粉砕” ”愛知外相訪米阻止”の文字が踊る。
玉井の脳裏に様々な記憶が浮かんでは消えていく…国会議事堂を取り巻く反安保の群衆、10・21国際反戦デーの新宿駅封鎖闘争、東大安田講堂の攻防戦、全国全共闘連合結成大会…その度に機動隊が導入され、ヘルメットを被った学生たちが連行されていく。様々な党派が離合集散する中で、「もはや武装蜂起なくしては、この国の人民に解放はない」と過激な方針を打ち出したのが”革命共闘”だった。組織の最高指導者・三橋信之(金山一彦)は、東京拘置所の面会室で、幹部の一人・上杉和枝(裕木奈江)に更なる武装闘争と奪還を要請。組織は銃を求め交番や鉄砲店を襲撃し、犠牲者と引き替えに銃を奪取して軍事訓練を行うために山へと向かう……。

と、突然途切れる画面。若手映画監督・阿南満也(萩原聖人)とプロデューサーの大山賢一(塩見三省)が、試写室で映画のラッシュを見ていたのだ。小説『光の雨』を映画化しようという企画で、同時代を過ごし現在はCMディレクターの樽見省吾(大杉漣)による初監督作品。樽見の推薦で、阿南はメイキングの仕事を依頼されたのだった。映画の冒頭部分は撮り終わっており、今後の撮影に向けてオーディションや脚本直しが進んでいるという。インパクトのある題材が自分にとって何かチャンスになるかもしれない…阿南は仕事を引き受けることにした。

 ”革命共闘”の幹部役には、大山が経営する芸能プロ所属の若手俳優たちが既にキャスティングされていた。阿南は、彼らのインタビューをビデオカメラに収めていく。「全然知りませんでした…」「革命ってものは、何なんでしょう…」。皆、30年前に事件を引き起こした同年代の若者の心理に、戸惑いを隠しきれない様子。阿南は原作の出版元である新潮社を訪ねる。編集者から渡された読者アンケートは、賛否両論。その中から『祝映画化……革命の/核角飛車取り/西瓜売り/誰何するのに/返事をせぬか』と書かれた一通を受け取る。差出人の名はなく、宛名は樽見省吾となっているが、監督は覚えがないと言う。
 オーディションには、漫才出身の倉重鉄太郎(山本太郎)、高田ゆみを演じる元アイドルの高取美奈(高橋かおり)、兄弟でやって来た戸張真(大柴邦彦)・善二(一條俊)など多彩な顔ぶれが集まった。新人俳優たちの胸に映画に賭ける期待と不安が交錯するなか、衣裳合わせ・リハーサルと準備が進み、第2次ロケが始まった。

 ”革命共闘”の鉄砲店襲撃と同じ頃、”赤色パルチザン”が「M作戦」と称して銀行や郵便局で強盗事件を引き起こした。街に最高幹部・倉重の指名手配書が貼られ、警察の捜索網が強化される。”革命共闘”は山奥にアジトを建設、来るべき殲滅戦に備えて射撃訓練に励み、自己批判と仲間による相互批判を通して「革命戦士」になるための準備を整えていた。だが組織の人間が、すべて同じ方向を向いていたわけではなかった。小説家を目指すという黒木利一(鳥羽潤)と、アジト内の抑圧された空気を嫌った今村道子(小嶺麗奈)が相次いで脱走。情報が漏れるのを恐れた組織はアジトの移動を迫られ、山を降りた2名の脱走者を殺害する……。

 役者業のかたわら、倉重は原宿の路上で自らの「言葉」を売り物に店を開いている。客を待ちながら役作りの為に台本を読むが「それはすなわち、自己批判と、自己批判に至るまでの相互批判である…何が言いたいんか、さっぱりわからんわ」。自己流に解釈していこうと、筆を手に台詞を書き写していく倉重。いよいよ極寒の地、知床での合宿ロケが始まる。

 雪の舞うアジトの前で倉重がアジ演説を行っている。”革命共闘”と”赤色パルチザン”…路線も歴史も違う2つの党の共通点は、武力闘争を過激に押し進めようという意志だけ。だが革命という大目的を達成すべく、両党は山中での合同軍事訓練を経て統一党”連合パルチザン”を結成することになった。新たに築かれたアジトの前で肩を組み”インターナショナル”を大合唱する仲間たち。
 その晩、倉重と上杉による自己批判を皮切りに、一同は口々に過去の出来事や心情的な弱さを吐露するが、皆の自己批判は悉く倉重によって論破されてしまう。統一党結成の事実さえ知らずアジトに戻った戸張真は倉重に徹底的に責められ、皆が寝静まった頃、思わず恋人の谷口淳子(西山繭子)と抱擁する。その様子を見逃さなかった上杉は「この二人の中には反革命が巣食っている」と非難。同志による「総括援助」の名のもと、二人への鉄拳制裁が容赦なく加えられる…。

 3人目の標的となった北川準(蟹江一平)が演じる総括の一場面。監督の樽見は何度もテイクを重ねた末、北川に尋ねる「君はどんな気持ちで殴るんだ?」「総括して革命戦士になりたい。そういう気持ちです」「じゃあ革命戦士って何だ?」…北川は答えることが出来ない。
 樽見の問いは、自分自身に対してのものでもあった。「革命って何だ?殲滅戦って何だ?…この撮影に終わりの日は来るのか?」樽見は思わず、阿南へと呟き尋ねる。「クランクインした映画はいつか終わります」と答える阿南だったが、翌日樽見の部屋には「消えます、映画のために」と書き置きが残されていた。
 あまりにも唐突な監督の蒸発。数日後、残されたキャストは都内の居酒屋で残念会を催す。映画がこのまま消えてしまうことを嘆く気持ちは皆同じ。阿南の構えるビデオカメラに向かって監督へのメッセージを叫び、”インターナショナル”の大合唱が店中に響きわたる。
 蒸発する直前、樽見のもとには新潮社からのアンケート葉書が再び届いていた。そこには、例の短歌と「2・24、0時、文学部一号館で待つ。我々の行動原理は変わらない」の文字。指定された場所を訪れた阿南は、そこで樽見の独白を聞く…1971年、退潮する学生運動の波・セクト同士の内ゲバ・内部密告・同志の死…「俺にはこの映画を撮る資格はない」そう呟いて樽見は去り、後には書き込みがされた台本だけが残った。このまま映画は、闇に葬り去られてしまうのだろうか……?

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