Pola X
原題:Pola X
フランス公開:1999年05月13日
日本公開:1999年10月09日
製作国:フランス・ドイツ・日本・スイス
言語:フランス語
上映時間:134分
配給:ユーロスペース

【スタッフ】
監督:レオス・カラックス
原作:ハーマン・メルヴィル(「ピエール」)
脚本:レオス・カラックス
   ジャン・ポル=ファルゴー
   ローラン・セドフスキー
音楽:スコット・ウォーカー
代表プロデューサー:ブリュノ・ペズリー
共同プロデューサー:カール・バウムガルトナー
          堀越謙三
          ルート・ヴァルトブルガー
製作主任:アルベール・プレヴォ
     レーモン・ゲーベル
製作進行:シルヴィ・バルト
     ジンギス・ボワコフ
助監督:ガブリエル・ジュリアン=ラフェリエール
ディスコンティニュイテ:エリー・ポワカール
撮影監督:エリック・ゴーティエ
音響:ジャン=ルイ・ユゲット
   ベアトリス・ヴィック
   ジャン=ピエール・ラフォロス
美術:ローラン・アレール
衣装:エステル・ヴァルツ
メイク:ベルナール・フロック
編集:ネリー・ケティエ
スチル撮影:マリオン・スタランス
デジタル特殊効果:エクス・マキーナ EX MACHINA(マルク・ベラン)
アーカイヴ映像:GAUMONT/ECPA/TELEIMAGES
使用フィルム:KODAK
現像所:GTC
製作会社:アレーナ・フィルム
     パンドラ・フィルム・プロダクション
     ユーロスペース
     ベガ・フィルム
     フランス・2・シネマ
     テオ・フィルム
     ポーラ・プロダクション

挿入歌:スコット・ウォーカー/「コックファイター」
    ヘンリー・パーセル/「メアリー女王の誕生日オード」
    ブラームス/「アルト・ラプソディ、作品53」
    アシ&マンソール・ラーバニィ/「イザ・カナ・ザンビ」
    ワン・ルオビン/「在那遙遠的地方」

【キャスト】
ピエール・ヴァロンブルーズ:ギヨーム・ドパルデュー
イザベル:カテリーナ・ゴルベワ
母親マリー:カトリーヌ・ドヌーヴ
リュシー:デルフィーヌ・ショイヨー
ペトルーツァ:ペトルータ・カターナ
ミハエラ:ミハエラ・シラギ
従兄ティボー:ローラン・リュカ
イザベルの弟フレッド:サミュエル・デュピュイ
編集者マルグリット:パタシュー
グループのボス:シャルナス・バルタス
アウグスト:ミゲル・イエコ
テレビ司会者:マティアス・ムレキュズ
タクシー運転手:ディーヌ・スーリ
カフェの主人:ムルード・ララビ
その息子:キレディーヌ・メジュービ
ホテル・エイハブの守衛:アルベール・プレヴォ

【受賞歴】
1999年カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品

【ストーリー】
〔ノルマンディ(Normandie)〕
 冒頭、戦闘機による空爆のシーン。死んだ者の墓さえも空爆し、死者を二度殺していく人間。ハムレットの独白が重なる。「この世の箍(たが)が外れた。何の悪意か、それを直す役目に生まれるとは!」と。
 ピエール・ヴァロンブルーズと母マリーは、森に囲まれたノルマンディのヴァルトヴィルの瀟洒な城館に暮らす。まだ早い夏の朝、ピエールは亡き父の遺品のオートバイで、婚約者のリュシーの家へと疾走する。ピエールと同じようなブロンド、そして碧眼のリュシー。二人は光そのものだった。彼はまだ目覚めぬ彼女のベットに裸でもぐり込み、二人は愛し合う。
 城館では、夏の日差しを浴びた美しい母がピエールを待っていた。美貌、名誉、財産とすべてを手にする母マリー。彼はそんな母を”姉さん”と呼ぶ。彼は日差しを浴びる母を、まるで恋人を慈しむかのように愛撫する。そして夜にはベットに二人で横たわり、高名な外交官だった父の思い出話をするのだった。
 ある日、ノルマンディを一望できる丘陵の上で、リュシーは不安を口にする。いつかピエールから聞いた夢のなかにでてくる顔の話だ。長い黒髪、その吐息…。追求するリュシーを、ピエールは激しく拒否する。
 ピエールと同様、ヴァロンブルーズ家のもうひとりの最後の末裔で、彼の従兄であるティボーがシカゴから戻ってきた。かつてピエール、リュシー、そしてティボーは常に一緒だった。久しぶりの再会に肩を抱き合うピエールとティボー。そんなふたりの再会を盗み見する長い黒髪の女。ピエールが振り向くと、女は逃げまどう。追いかけるピエール。大切なバイクは転倒し、ピエールも怪我をする。彼女には追いつけなかった。
 ピエールは、アラジンという名で小説を書いていた。最初の作品は「光の中で」というタイトルで、執筆者のミステリアス性とも相まって話題をよんでいた。しかし現在執筆の小説で彼は”何か”を探していた。その夜、ついにその”何か”、つまり”顔”と出会ったと書く。
 ピエールの変化を感じとったマリーは、リュシーとの結婚の日取りを早々に決める。動揺するが受け入れ、リュシーに報告に走るピエール。しかしその途中、暗闇の中に、ピエールはあの顔を再び見る。追いかけるピエール。今度こそ追いつく。そして「君は誰なんだ?」という問いに彼女の独白が始まる。たどたどしい言葉で。
 「あなたは一人息子じゃない。私を信じて、私はあなたの姉……」と。やがて彼女の真実が話されていく。「初めは黒い悪意に満ちた家で老人と老婆だけ。そしてフランスの紳士が現れ、彼と一緒に豊かな国へ。白く大きな家、美しいブロンドの彼の奥さん、広い庭と光。そして奥さんの赤ちゃんが生まれる。でも赤ちゃんにキスすると怒る奥さんに、家を出された。それから新しい国の小さな村でジバ伯母さんと住む。爆弾、火の海、幾つもの死体。ジバ伯母さんが、話してくれた。母さんは死んだ。父さんはフランスの紳士。それでフランスに来た。あなたのところへ、私の弟。でもいまは自分が誰なのかわからない……」
 ピエールはイザベルと同じ村出身のペトルーツァとその娘ミハエラたちが隠れるトンネルに行き、彼女の告白を信じると何度も言う。そしてその後、現在自分が書いている小説の中に登場した、いつ崩れるかわからない巨大な卵型の”恐怖岩”に身を横たえる。あらゆる真実を受けていこうという決意とともに。ピエールは家を出る決心をしたことを告白しようとリュシーの家に行く。「ある人に出会ったんだ」と告白するピエール。号泣するリュシー。マリーにも同じく告白し、執筆中の小説のフロッピーと身の回りのものだけトランクに詰める。そして思い立ったようにハンマーを持ち出し、封印されていた秘密の小部屋のドアを打ち破る。しかしそこは空っぽで、何もない。出ていくピエール。動揺するマリー。
 イザベルたちが身を寄せるトンネルの中で、ピエールは「一緒に暮らそう。僕の妻と偽って」と彼女に懇願する。そして「僕はずっと待っていた。この世を超えるきっかけを」と告白する。

〔パリ(Paris)〕
 パリのサンラザール駅に着いたピエールたちは、ティボーに頼ろうとタクシーに乗るが、イザベルたちを汚物のように扱う運転手との争いに巻き込まれ、警察沙汰になり傷を負う。やっとの思いでオスマン大通りのティボーのアパルトマンに辿り着くが、ティボーは汚いものを見るような憎しみに満ちた目で、ピエールたちを追い返す。町のホテルも追われ、場末のホテル・エイハブに二部屋とるのがやっとであった。
 動物園に行き、中華レストランではしゃぐピエールとイザベルたち。ホテルの部屋に戻る際、ピエールの首筋にキスをするイザベル。イザベルはピエールの小説が進んでいないことを心配する。しかしピエールは”最悪の疫病より最悪な本当の真実”を書くために、もう少し時間が必要だという。お金の無心のために担当の編集者マルグリットに会うピエール。しかしマルグリットも「世を罰すれば、世の報いを受けるのよ」とムージルの言葉を引用して、暗にピエールを諌めるのだった。
 動物園で、象は人間が汚いから嫌いなんだというピエールの言葉を信じたミハエラは、行き交う人々の横で、「汚い、汚い、汚い……」と呟き続ける。それに憤慨した男がミハエラを殴り、翌朝彼女の容体は急変、死に至ってしまう。
 ホテルを出、彷徨う三人。やがて北部の郊外で、アンダーグラウンドなバンド活動の傍ら、武装訓練をする集団が潜伏する廃墟の倉庫に、住みかを求める。
 廃墟に落ち着いた姉と弟かもしれない二人はやがて、すべての外で、真実を求めるかのように激しく愛し合う。
 ラジオのニュースでクルヌーヴ駅での地下鉄爆破のニュースが伝えられる。ピエールは廃墟にいない。動転し走るイザベル。しかしピエールは小説の題材を求めて、バンドのリーダーに話を聞いていただけだった。
 そんな中、ヴァロンブルーズ家の使用人アウグストが、母マリーの事故死の知らせを持ってやってくる。そしてリュシーも病気で、ティボーが看病していることも。母の葬儀を遠くから見守るピエール。
 ある日、病身のリュシーがピエールを求めてやって来る。ティボーが無理矢理引き戻そうとするが、リュシーの意志は固い。イザベルにはリュシーのことは従妹と、そしてリュシーにはイザベルとの秘密は明かさぬまま、リュシーは廃墟に住む。お金も底をついていた。真冬のパリ。ピエールはマルグリットに相談の電話をする。マルグリットは、アラジンのベールを明かすべく、テレビ出演を勧める。お金のためにその決心をするピエール。出演当日テレビ局へ向かうピエール、イザベル、リュシー。しかし観客の罵倒のなか、ピエールは混乱をきたすだけでテレビ出演は終わった。街を彷徨うピエール。
 ピエールは血の河で溺れる自分とイザベルの夢を見る。
 イザベルは「私があなたの幸せを邪魔しているのよ」といって、ピエールとリュシーの前でセーヌ河の観覧船の上から奔流へ身を投げる。すぐにピエールが助けたが、イザベルは入院することになる。「後悔ばかりの人生だ」と自分をなじるピエール。イザベルに会うために病院にやってくるティボー。そしてリュシーが婚約者であることを話すのだった。真実が隠されていたことに、絶望するイザベル。それを告げられたピエールは「真実はどこだ、イザベル?」と嘆く。新しい小説も、模倣の産物として酷評されるだけであった。そして”ひとりで来い”というティボーの手紙をにぎりしめて、イザベルが止めるのも聞かず、そこに向かう。
 狂気に満ちたピエールは、街中でティボーを「ヴァロンブルーズ!」と呼び止め、殴りかかるティボーの口に銃を突きつける。そして「僕たちが最後の末裔だ」と言って引金を引く。かけつけるイザベルとリュシー。警察に保護されるピエールに向かい「私の弟!」と叫ぶイザベル。真実を知り、立ち尽くすリュシー。ピエールの元に走り「私は真実を言ったわ」というイザベルは、その後走ってきた車にぶつかる。車の中でそのぶつかる音を聞くピエール。ピエールには森に射し込む光しか見えていない。

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