WAR HORSE
原題:WAR HORSE
日本公開:2012年3月2日
製作国:アメリカ
言語:英語
画面:シネスコサイズ
音響:ドルビーSRD
上映時間:146分
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ

【スタッフ】
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:リー・ホール
   リチャード・カーティス
原作:マイケル・モーパーゴ「戦火の馬」(評論社刊)
製作総指揮:フランク・マーシャル
      レヴェル・ゲスト
製作:スティーヴン・スピルバーグ
   キャスリーン・ケネディ
共同製作:アダム・ソムナー
     トレイシー・シーウォード
撮影ヤヌス・カミンスキー
美術:リック・カーター
編集:マイケル・カーン
衣装デザイナー:ジョアンナ・ジョンストン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
キャスティング:ジナ・ジェイ

【キャスト】
ローズ・ナラコット:エミリー・ワトソン
ライオンズ:デヴィッド・シューリス
テッド・ナラコット:ピーター・マラン
エミリーの祖父:ニエル・アレストリュプ
ジェームズ・ニコルズ大尉:トム・ヒドルストン
アルバート・ナラコット:ジェレミー・アーヴァイン
ジェイミー・スチュワート少佐:ベネディクト・カンバーバッチ
ジョルディの兵士:トビー・ケベル
エミリー:セリーヌ・バケンズ
サイ・イーストン:ゲイリー・ライドン
アンドリュー・イーストン:マット・ミルン
パーキンス:ジョフ・ベル
チャーリー:パトリック・ケネディ
フリードリヒ:ニコラス・ブロー
ギュンター:ダフィット・クロス
ミヒャエル:レオナート・カロヴ
フライ:エディ・マーサン
ブラント:ライナー・ボック
デイヴィッド・ライオンズ:ロバート・エムズ

【ストーリー】
<イギリスの農村>
 第一次世界大戦前夜のイギリス。緑の丘陵地帯にある小さな村の牧場で、4本の脚先が白く、額に菱形の白い斑がある美しい鹿毛の仔馬が生まれた。誕生の瞬間を目撃した少年アルバート・ナラコット(ジェレミー・アーヴァイン)は、その仔馬に魅了される。
 仔馬は、母馬と引き離され、村の馬市で競売にかけられ、二人の男によって値が吊り上げられていく。酒に酔った勢いで競りに勝った貧しい農夫は、仔馬を引いて家に帰る。彼を迎えたのは、妻のローズ(エミリー・ワトソン)と息子アルバート。男はアルバートの父親テッド・ナラコット(ピーター・ミュラン)だった。ローズは、農耕馬に向かぬサラブレッドの血の入った仔馬のために大金を使った夫に怒りを隠せない。テッドが脚を悪くしたこともあって、今やナラコット家の農場は荒地と化し、地代もまともに払えずにいた。だがアルバートは、両親の諍いをよそに、あの仔馬だとわかって目を輝かせる。
 彼は、仔馬にジョーイと名付け、深い愛情を注いで育てていく。ジョーイは、彼の「ホー、ホー」という口笛に反応し、走り寄って来るようになった。ジョーイに乗ったアルバートは野山を駆け回り、片時も離れずに過ごす。だが、幸せな日々は続かなかった。
 ある日、地主のライオンズ(デヴィッド・シューリス)が地代の徴収にやって来た。彼は、馬市でテッドと競りあった男。地代を払えなければ、ナラコット家の農場はライオンズに取り上げられてしまう。支払いを待ってほしいと懇願する家族に対し、ライオンズは条件を提示する。「あの馬が土地を耕せたら残額の支払いは待ってやる」と。しかし、もしそれが出来なければ、その場で馬も土地も取り上げられる。テッドの憤りは、働き手にならぬジョーイに向けられた。彼は足早に納屋へ向かうとムチを掲げて農耕用の馬具をジョーイに付けようとする。その乱暴な行為にジョーイは怯え、後ろ脚でテッドを押し倒した。怒ったテッドは、起き上がりざま銃を掴んでジョーイに銃口を向ける。飛び込んで来たアルバートは、愛馬を守って立ちふさがると、父に向かって静かに宣言した。「僕がジョーイを農耕馬に鍛える」
 それがジョーイと農場を守る術だった。アルバートは嫌がるジョーイにそっと馬具を付けた。
 ナラコット家の農場には、首尾を見届けようとライオンズたちが集まって来た。彼らの前で、アルバートはジョーイを呼ぶが、慣れぬ馬具を付けられたジョーイは動かない。アルバートは心を鬼にしてジョーイにムチを入れた。初めての痛みにジョーイはいななき、重い鍬を引いて発進した。一人と一頭は、荒れ果てた広い農場を耕し続ける。ジョーイの胸は馬具で擦りむけ、脚は力の限界まで地面を踏みしめる。
 時が経ち、かつての荒地にはカブが育ち、豊かな農地となった。アルバートは、仕事を終えたジョーイの馬具を外し、傷を優しく手当する。ローズはそんな息子を誇りに思い、テッドも自分の行為を恥じていた。
 アルバートとジョーイは、これまで以上に強い絆で結ばれていく。農作物も育ち、暮らしの希望も見えてきた。だがそんな矢先、激しい嵐で作物は全滅。……そして、戦争が始まった。
 村の広場で若者たちが入隊の手続きをしているその横に、ジョーイを引いたテッドがいた。彼は家族を飢えさせぬため、アルバートに内緒でイギリス軍にジョーイを売ったのだ。彼にとっても、それは辛い決断だった。ジョーイの美しさと強靭な肉体は、陸軍のニコルズ大尉(トム・ヒドルストン)をも魅了した。
 ジョーイがいないことに気づき、全力で追って来たアルバートは、ジョーイを連れて行かぬよう、ニコルズ大尉に懇願し、それが叶えられないとわかると、愛馬と一緒にいたいがために19歳と嘘をついて従軍を申し出る。だが必死の嘘は誰の目にも明らかだった。アルバートは、別れが避けられぬことを悟る。
 ジョーイは軍人に手綱を引かれ、村の若者たちと共に出征していく。今のアルバートには、なす術もない。彼に気づいたジョーイは必死に首を向けるが、手綱に制され歩き続ける……。

<フランスの前線>
 訓練を経て、ジョーイはニコルズ大尉が騎乗する騎兵隊の馬となった。大演習で、隊一番の俊足を誇る、ジェイミー・スチュワート(ベネディクト・カンバーバッチ)の大きな黒馬トップソーンにジョーイは競り勝つ。ニコルズは誇らしげに笑顔を見せた。
 ほどなく騎兵隊はフランスの前線へと送られた。戦闘前夜の野営地で、ニコルズは、静かにスケッチブックに鉛筆を走らせる。ジョーイの飼い主だった少年に、ジョーイの絵を送るつもりで……。彼は、少年と交わした「ジョーイを大切にし、戦争が終わったら君に返す」という約束を忘れていなかった。
 翌朝、ニコルズはジョーイを安心させようと身体を撫で、優しく声をかけるが、本当は誰もが心に恐怖を隠していた。
 ついに戦闘の時が来た。早朝の穏やかな空気を切り裂くように、ニコルズ大尉は敵であるドイツ軍の陣地へとジョーイを駆った。イギリス軍騎兵隊の馬の足音が轟き、サーベルが光り、のんびりと朝を迎えていたドイツ兵たちがなぎ倒されていく。残った兵士たちが森の中へ逃げ込み、戦いに勝利したと思った矢先、森の奥からドイツ軍の銃が次々と反撃の火を噴いた。銃弾がジョーイの耳をかすめ飛び、その瞬間、ジョーイの背は無人になった……。

<フランスの森>
 ドイツ兵たちは、鞍に誰も乗せずに森に迷い込んで来たイギリス軍の美しい鹿毛馬(ジョーイ)を見つけ、取り囲む。捕虜にしたイギリス軍将校が乗っていた黒馬(トップソーン)もまた、ドイツ軍のものとなった。二頭の馬は、ギュンター(デヴィッド・クロス)とミヒャエル(レナード・キャロウ)という若い兄弟に世話が任された。兄は弟を気遣い、まだ若い弟は兄に自分を一人前の男だと認めさせたがっている。やがて、皮肉にもミヒャエルだけが前線に送られることになった時、チャンスを喜ぶ弟をよそに、ギュンターはある決意をする。ギュンターは、鹿毛馬にまたがり黒馬の手綱を握ると、行軍からミヒャエルをさらって走り去った。「僕がお前を守る!」
 その夜、二人は鹿毛馬(ジョーイ)と共に風車小屋に隠れ、兵士の顔から仲の良い兄弟に戻っていた。だがその脱走劇はあっけなく終わる。脱走という罪を犯した兄弟は、捕えられ、味方が構える銃の前に立った……。

<フランスの田園>
 フランス人の少女エミリー(セリーヌ・バッケンズ)は、風車小屋で二頭の美しい馬を見つけ、一緒に住む祖父(ニエル・アレストリュプ)に飼う許しを得る。彼女は鹿毛馬(ジョーイ)にフランソワという名を付けて可愛がった。そんな光景を眺めながら、祖父は、体の弱い孫娘の孤独を癒してくれる美しい馬に、希望の光を見る。まるで天使がやって来たようだ、と。
 自然に囲まれたささやかな農家の暮らしにも、戦争は容赦なく牙をむく。エミリーの両親は略奪にやって来た兵士に抵抗して命を落としていた。そして今も、遠くから砲弾の音が響いている。
 とうとう家に大勢のドイツ兵がやって来た。エミリーは馬を素早く隠す。兵士たちは、当たり前のように畑の作物を奪い、家中を物色して去って行った。緊迫した空気の中、愛するエミリーと馬を守れて祖父は安堵する。
 日頃からエミリーは、優しい祖父が両親の死について話してくれないことが心の棘となっていた。祖父は、娘夫婦を助けることが出来なかったという苦悩と後悔をエミリーに告白しながら、ずっと納屋に仕舞っていた鞍を取り出す。彼は、亡き娘が使っていたその鞍をエミリーへと手渡す。エミリーは、母の形見の鞍に祖父の想いを知った。
 エミリーは、フランソワ(ジョーイ)に鞍を乗せてまたがり、丘の向こうへ駆けていく。孫娘の後ろ姿には喜びが溢れていた。「もっとゆっくり!」とエミリーを案じながらも、祖父は自身の心が浮き立つのを感じていた。しかし、その姿が見えなくなった時、突如不安に駆られる。悪い予感を払いながら丘の上に辿り着いた祖父が見たものは、谷一面に群れるドイツ兵だった……。

<フランスの谷>
 谷に野営していたドイツ兵たちは、美しい二頭の馬を手に入れた。馬係がこの二頭に名前を付けようとすると、将校が言い放つ。「死んでいくものに名前など付ける必要はない」
 野営地には、傷つき、疲れきった馬たちがいた。彼らは、数頭がグループとなり、丘の上に重い大砲を運ばなければならない。とうとう、その前方グループの一頭の馬が力尽き倒れ込む。将校は、容赦なくその馬を撃ち、馬係に、新しく手に入れた力の強そうな大きな大きな黒馬(トップソーン)を死んだ馬の代わりにするよう命じる。馬係は、脚の状態が悪い黒馬(トップソーン)には無理だと進言するが、許されるはずもなかった。すると、鹿毛馬(ジョーイ)が大砲を牽引しようとするかのように躍り出た。馬係は驚きながらも、馬具をその馬に繋ぐ。すると馬(ジョーイ)は、脚が折れそうになるほど斜面を踏ん張り、大砲を牽引し続け、とうとう丘の上まで引き上げたのだった。
 戦争は激しさを増し、美しかった馬たちも泥にまみれている。イギリス兵の襲来を受け、退却命令が出された時、何とか馬たちを連れて行こうと懸命に手綱を引く馬係の努力も空しく、とうとう黒馬(トップソーン)は歩みを止めて崩れ落ち、静かに目を閉じた。もう一頭は、黒馬に鼻を押し付け、傍から離れようとしない。爆音が迫った時、男は軍規を破る決意をする。「逃げろ!」。彼は馬(ジョーイ)を放った。まるで自身の生きる希望を託すように……。

 その頃、あれから4年を経て、屈強な若者となったアルバートは、フランス激戦地で戦っていた。銃弾が飛んでくる中、彼は塹壕を飛び出し、敵に向かって走り出す……。

 廃墟となった村を、炎が燃え盛る戦場を、ひたすら走り続ける一頭の馬(ジョーイ)がいた。その行く手には、人間たちが織りなすさらなるドラマが待っていた……。

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