All Around Us
英題:All Around Us
日本公開:2008年06月07日
製作国:日本
言語:日本語
画面:ビスタ
音声:ドルビーデジタル
上映時間:140分
支援:文化庁
制作プロダクション:シグロ
製作:シグロ
   ビターズ・エンド
   衛星劇場
   アミューズソフトエンタテインメント
   博報堂DYメディアパートナーズ
配給:ビターズ・エンド

【スタッフ】
監督:橋口亮輔
脚本:橋口亮輔
原作:橋口亮輔
編集:橋口亮輔
プロデューサー:渡辺栄二
企画:山上徹二郎
製作:山上徹二郎
   大和田廣樹
   定井勇二
   久松猛朗
   宮下昌幸
   安永義郎
撮影:上野彰吾
照明:矢部一男
録音:小川武
美術:磯見俊裕
装飾:松田光畝
衣装デザイン:小川久美子
ヘア・メイク:豊川京子
助監督:斉藤博士
製作担当:森崎裕司
キャスティング:城戸史朗
プロダクション・マネージャー:佐々木正明

音楽:Akeboshi
主題歌:Akeboshi『Peruna』

音楽プロデューサー:北原京子
音楽ミキサー:熊坂敏
音楽エディター:森山貴之
キャスト
佐藤翔子:木村多江
佐藤カナオ:リリー・フランキー
吉田波子:倍賞美津子
吉田勝利:寺島進
吉田雅子:安藤玉恵

安田邦正:柄本明
吉田栄一:寺田農
諸井康文:八嶋智人

生方圭子:峯村リエ
和久井寛人:温水洋一
小久保健二:山中崇
夏目先輩:木村祐一
橋本浩二:斎藤洋介
田中ツヨシ:加瀬亮
幼女誘拐殺人事件の弁護士:光石研
富山:田中要次
内田:佐藤二朗
佐伯志津子:新屋英子
売春事件の裁判長:田辺誠一
資産家の母親:横山めぐみ
小山悦子:片岡礼子
大間真治:新井浩文
畑山太郎:上田耕一

佐古田征二:春海四方
マッサージ師:菅原大吉
奸原聡:山中聡
梶山栄子:菊池亜希子
マンションの隣人:江口のりこ
遺族の父親:矢沢幸治
包帯をした中年女性:佐藤直子
庵主様:髙橋かすみ
倉持事件の裁判長:志賀廣太郎

赤堀雅秋
伊藤修子
岩本えり
内田慈
遠藤留奈
黒田大輔
笹野鈴々音
鈴木歩己
中野英樹
萩原利映
藤本喜久子
古舘寛治

矢崎まなぶ
内藤トモヤ
申瑞季
村田牧子
三浦俊輔
作間ゆい
松本朋子
稲毛礼子
永井若葉
伊藤幸純
森山静香
角南範子
浅田圭一
田原礼子
吉田昌美
古仁屋あつこ
岩崎裕司
山本裕子
井上三奈子
山口ゆかり
山田秀香
佐藤幾優
シトミマモル
西本泰輔
おおしまひかり
梅田宏
児玉頼信
島田曜蔵
窪園純一
高橋修
山崎海童
梁瀬龍洋
屋根真樹
中村圭太
鳴海剛
宮沢天
竜沢孝和
岡崎智浩
高橋康則
成瀬功
榎本由希
野口雅弘
森富士夫
田野良樹
大久保運
藤岡太郎
古屋治男
荒木誠
白樺真澄
日下部千太郎
高松克弥
西本竜樹
村田暁彦
村田啓治

アンナ
ジル シルビア
金橋良樹
吉田晋一
徳永淳
積圭祐
海老原敬介
青木一
浅里昌吾
堤匡孝
南好洋
石川雄也
吉村玉緒
石川泰子
土屋史子

最上友太朗
鵜飼一希
古田大虎
今井哲之介
徳永礼音
本田佳純
宇敷陽南
堀井秀子
師岡恒夫
若井淳
フラン

【ストーリー】
1993年7月。ふたりの部屋のカレンダーには「×」の書き込み。妻・翔子(木村 多江)が決めた週に3回の夫婦の「する日」の印だ。しかし、その日に限って、靴修理屋で働く夫・カナオ(リリー・フランキー)の帰宅は遅い。女にだらしないカナオが遊び歩いているのでは? 彼の手の甲をぺろりと舐め、浮気かどうかチェックする翔子。カナオは先輩の紹介で、新しく法廷画家の仕事を引き受けてきたところだった。「はあ!?靴屋は? とにかく……決めたことやってから話そうか」。苛立った様子で、翔子は寝室へ消える。「この感じからは……ちょっと勃たないと思うな」。カナオはぼやきながら、渋々寝室へ入っていく。

ふたりはどこにでもいるような夫婦。翔子は女性編集者として小さな出版社でバリバリ働いている。一方、カナオは法廷画家の仕事に戸惑いつつ、クセのある記者・安田(柄本 明)や先輩画家らに囲まれ、次第に要領を掴んでいく。職を転々とするカナオを、翔子の母・波子(倍賞 美津子)、兄・勝利(寺島 進)とその妻・雅子(安藤 玉恵)は好ましく思っていない。しかし、そんなカナオとの先行きに不安を感じながらも、小さな命を宿した翔子には喜びのほうが大きい。「お、動いた!」。カナオと並んで歩く夜道で、翔子は小さくふくらんだお腹に手を触れる。カナオのシャツの背中をぎゅっと掴んで歩くその後姿には、幸せがあふれていた――。

1994年2月。ふたりの部屋に掛けられたカレンダーからは「×」の印が消えている。寝室の隅には子どもの位牌と飴玉が置かれていた。初めての子どもを亡くした悲しみから、翔子は少しずつ心を病んでいく。

気分転換にと新居へ引っ越しする翔子とカナオ。友人と鍋を囲みながら、カナオは猥談に花を咲かせていた。突然、「蜘蛛!」という悲鳴があがるのを聞いて、翔子は過剰な反応を示す。「蜘蛛を殺さないで!」。絶叫する彼女を、カナオがじっと見つめている。

法廷でカナオはさまざまな事件を目撃していた。1995年7月、テレビは地下鉄毒ガス事件の初公判を報じている。産婦人科で中絶手術を受ける翔子。すべてはひとりで決めたこと、カナオにも秘密である。しかし、その罪悪感が翔子をさらに追い詰めていく。弱った体で無理をおして書店でのサイン会に立ち会うが、ふとしたことから涙があふれてしまう。そして、ついに実家で倒れてしまうのだった。

1997年10月、法廷画家の仕事もすっかり堂に入ってきたカナオ。翔子は仕事を辞め、心療内科に通院している。台風のある日、電話が通じないことに不安を感じたカナオが家へ急ぐと、風雨が吹きこむ真っ暗な部屋で、翔子はびしょ濡れになってたたずんでいた。「わたし、子どもダメにした……」。翔子は取り乱している。はずみで蜘蛛を殺してしまったカナオを、泣きながら、何度も強く殴りつける翔子。「どうして……どうして私と一緒にいるの?」。そんな彼女をカナオはやさしく抱きとめる。「好きだから……一緒にいたいと思ってるよ」。ふたりの間に固まっていた空気がようやく溶け出していく。

茶会に通うようになった翔子は、そこで庵主様からリフォームする本堂の天井画を描かないかと提案される。1998年7月、いつの間にか、ふたりの部屋のベランダはささやかな家庭菜園に変わっていた。赤く実をつけたトマトをもぎ、美味しそうにかじる翔子とカナオ。夜、ふと目を覚ましたカナオは、熱心に画集に見入る翔子の姿を発見する。

1999年2月のカレンダーには再び「×」の印が付けられている。ふたりの生活は少しずつ平穏を取り戻していた。カナオがバイトする絵画教室でスケッチに励む翔子。ふたりの部屋の居間には翔子が描いた美しい絵の数々が立てかけられている。季節は、雪景色から桜の春、そしてヒマワリが咲き誇る夏を過ぎ秋へ。時がすべてを洗い流していくなか、カナオは法廷で地下鉄毒ガス事件、小学児童殺傷事件といった陰惨な事件が裁かれるのを目撃していた。

2000年5月、長く離れて暮らす翔子の父がガンになり、翔子とカナオは名古屋へ見舞いに出掛ける。宿泊したホテルで出くわす他人の結婚式の風景。式を挙げていないふたりは、その光景をしばらくの間見つめていた。波子の家に集った親族に、父の様子を報告する翔子とカナオ。波子は本当は自分が夫を裏切ったことを打ち明け、「翔子をよろしくお願いします」とカナオに頭を下げる。思わずこみ上げる翔子。

そして2001年7月。部屋には名古屋で撮影したふたりの記念写真が飾られている。完成した天井画を穏やかな表情で見つめる翔子とカナオ。畳の上に寝そべって静かに手を絡ませている。数日後、カナオは法廷で小学児童殺傷事件に死刑判決が下るのを見ていた。被害者遺族に罵詈雑言を吐き捨て、退廷させられる被告。裁判所の渡り廊下で、「人、人、人……」と呟きながら、カナオはまた今日も白い紙に向かう。