DRIVING MISS DAISY
原題:DRIVING MISS DAISY
米国公開:1989年12月15日
日本公開:1990年05月12日
製作国:アメリカ合衆国
言語:英語
画面:シネマスコープ
音響:ドルビーステレオ
上映時間:99分
年齢制限:G
配給:東宝東和

【スタッフ】
監督:ブルース・ベレスフォード
製作:リチャード・D・ザナック
   リリ・フィニー・ザナック
製作総指揮:デヴィッド・ブラウン
脚本:アルフレッド・ウーリー
撮影:ピーター・ジェームズ
美術:ヴィクター・ケンプスター
編集:マーク・ワーナー
衣裳:エリザベス・マクブライド
メイク:マンリオ・ロケッティ
音楽:ハンス・ジマー

【キャスト】
ホーク・コバーン:モーガン・フリーマン
デイジー・ワサン:ジェシカ・タンディ
ブーリー・ワサン:ダン・エイクロイド
フローリン・ワサン:パティ・ルポーン
アデラ:エスター・ローレ
ミス・マクラッチー:ジョアン・ハヴリージャ
オスカー:ウィリアム・ホール・Jr
ミリアム:ミュリエル・ムーア
ビューラ:シルヴィア・カーラー
ケイティ・ベル:クリスタル・R・フォックス

【受賞歴】
第62回アカデミー賞:作品賞・主演女優賞・脚色賞・メイクアップ賞
第47回ゴールデングローブ賞:作品賞・主演男優賞・主演女優賞
第44回英国アカデミー賞:主演女優賞
第40回ベルリン国際映画祭:最優秀競演賞

【ストーリー】
 1948年、アメリカ南部、ジョージア州アトランタ。
 ミス・デイジーはユダヤ人のもと教師で、大きな屋敷に黒人のメイド、アデラとふたりで住んでいる。70歳を過ぎているが、本人はまだまだ意気軒昂、今日も、自らハンドルを握って出かけようとしたが、その矢先、ギアを入れ違えて、車は隣家の庭に突っこんでしまった。
 幸い怪我はなかったものの、息子のブーリーは、デイジーを心配して、運転手を雇うことにした。
 やって来たのは、ホーク。ところが、デイジーにはこれが気に入らない。運転手つきの車など金持ちぶっていると見えるではないか、第一、自分が運転もできないほど年をとったと認めるのが、腹立たしい。
 新車のハドソンが買われ、ホークはデイジーの屋敷に通い始めた。デイジーが車に乗ろうとしないので、ホークはシャンデリアを掃除したり、庭いじりをしたりと精を出すが、デイジーはそれにも難くせをつける。ホークはそんなデイジーの小言を、飄々と受け流していく。
 しばらくたったある日、デイジーは歩いて買い物に出た。すかさずホークは車を出して、デイジーの横をゆっくりと走らせた。ホークの強引な作戦に、近所の目を気にしてか、デイジーはようやく、ハドソンに乗り込んだ。それでも、スピードが速いの、道が違うのと口うるさい。ホークは意に介さずあっさり目的のマーケットにつけた。もっとも、デイジーはこの新しい境遇をすっかり受け入れた訳ではなかった。日曜日、ユダヤ教会の正面にホークが車を回すと、さっそく文句をつけるのを忘れない。
 ある朝早く、ブーリーにデイジーから緊急の電話が入った。何事かとブーリーが駆けつけると、デイジーはホークが鮭缶を1つ盗んだと騒ぎ立てた。ブーリーがうんざりしているところへ、ホークがやって来た。鮭缶を出して、デイジーの許可があったから食べた分を、新しく買って来たという。思わず恥ずかしく思うデイジー。だが、この事件がきっかけになってデイジーは、ホークを受け入れるようになった。
 デイジーは亡き夫の墓参りを欠かさなかった。その日も、ホークを連れて花を供えていた。思いたって、デイジーはホークに知人の墓にも花を供えるように言った。戸惑うホーク。とうとうホークは字が読めないと告白した。いつも読んでいる新聞は、ただ写真を見ているだけだという。もと教師のデイジーに、これは見過ごす訳にはいかない。アルファベットは知っているというホークに、その場で読み方を教える。目当ての墓を見つけて歓ぶホーク。
 ブーリーの家では妻のフロラインが毎年クリスマスを祝っていた。熱心なユダヤ教徒のデイジーには、決して面白いことではない。しかし、この年、招かれてブーリーの家についたデイジーは、ホークにささやかなプレゼントを差し出した。教師時代に使っていた読み方の本だった。デイジーが、初めてホークに見せたやさしさだった。
 ハドソンが古くなったので、ブーリーはキャデラックの新車に買い替えることにした。古くなったハドソンはホークが買い取ったという。デイジーが新車を嫌がった時のためのホークの心づかいだった。
 90歳になる伯父の誕生祝いのためにデイジーはホークの運転でアラバマ州に向かった。途中、車を停めて昼食をとっていると、パトロールの警官が尋問に来た。黒人が高級車に乗っているのを不審に思ったのだ。疑われるようなことはある筈がない。だが、「黒人とユダヤ人か」という警官の捨てぜりふに、デイジーの心は痛んだ。ドライブは、デイジーが道を間違えたため、予定よりはるかに遅れていた。既に日は落ち、あたりは暗くなりかけた。ホークは車を停めると、小用を足しに出た。一人、とり残されたデイジーは、恐怖を感じ身をすくめた。ホークをどんなに頼りにしているか、デイジーは、初めて知ったのだった。
 ブーリーの事業は年と共に発展していた。建物も改装され、新しい機械が工場でうなりを上げていた。ホークは、ブーリーに、給料を上げてくれるよう交渉に来た。他からも口があると言うのだ。ブーリーはOKした。もちろんホークに、デイジーから離れる気はなかった。
 デイジーの家にも、時代の波は押し寄せていた。台所のTVに見入っているアデラとホーク。だが、アデラはそのまま崩れるように倒れ、急死した。この大きな屋敷に、デイジーは二人きりになってしまった。
 ある朝、大雪が降った。こんな日ではホークも来れない筈だ。デイジーは、孤独をひしひしと感じていた。しかし、ホークはいつもの通りやって来た。ブーリーの電話に、デイジーはホークが来ていると伝え、「役に立つ男」と言った。それはデイジーにとっては、最大限の褒め言葉だった。
 ブーリーの事業はさらに発展し、ブーリーは商工会議所の名誉賞を受ける名士になっていた。
 街も変わっていった。ある日、デイジーの通うユダヤ教会が、何者かに爆破された。激動する時代が近づいていた。
 黒人解放運動の指導者キング牧師を招いての夕食会が開かれたが、仕事上のつき合いを考えたブーリー夫妻は、欠席する方を選んだ。ブーリーはホークを連れていったらと、提案したが、それはデイジーには思いもよらぬことだった。形ばかりホークを誘ってみたが、デイジーの気持ちに怒るホークはかぶりを振った。街の上流の人が集まる席に、キング牧師の演説が流れる。差別からの解放を訴えるその声を、ホークは外の車の中で聞いていた……。
 そして、ついにデイジーがボケに襲われる日が来た。記憶が混乱し、取り乱すデイジーをホークは必死になだめた。いまやすがるようにデイジーはホークに言った。「ただ一人の親友……」と。
 さらに時は流れ、73年。ホークはブーリーと共にホームにデイジーを訪ねた。デイジーにパイを食べさせるホーク。人生の最後にふたりの絆は、最も深く、結ばれていた。