MUNICH
原題:MUNICH
米国公開:2005年12月23日
日本公開:2006年02月04日
製作国:アメリカ合衆国
言語:英語・ドイツ語
画面:スコープサイズ
音響:ドルビーデジタル
上映時間:164分
年齢制限:PG-12
配給:アスミック・エース

【スタッフ】
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:トニー・クシュナー
   エリック・ロス
製作:スティーヴン・スピルバーグ
   キャスリーン・ケネディ
   バリー・メンデル
   コリン・ウィルソン
原作:ジョージ・ジョナス『標的は11人 モサド暗殺チームの記録』
撮影ヤヌス・カミンスキー
美術:リック・カーター
編集:マイケル・カーン
衣裳:ジョアンナ・ジョンストン
音楽:ジョン・ウィリアムズ

【キャスト】
アヴナー:エリック・バナ
スティーヴ:ダニエル・クレイグ
カール:キアラン・ハインズ
ロバート:マチュー・カソヴィッツ
ハンス:ハンス・ツィッシュラー
エフライム:ジェフリー・ラッシュ
ダフナ:アイェレット・ゾラー
アヴナーの母:ギラ・アルマゴール
パパ:マイケル・ロンズデール
ルイ:マチュー・アマルリック
アンドレアス:モーリッツ・ブライプトロイ
シルヴィー:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
イヴォンヌ:メレット・ベッカー
ジャネット:マリ=ジョゼ・クローズ
トニー(アンドレアスの友人):イヴァン・アタル
ツヴィ・ザミール将軍:アミ・ワインバーグ
ゴルダ・メイア首相:リン・コーエン
ワエル・ズワイテル:マクラム・コーリー
マフムッド・ハムシャリ:イーガル・ナオール
フセイン・アル=シール:モステファ・ジャジャム
エフード・バラック:ジョナサン・ローゼン
アリ・ハッサン・サラメ:メーディ・ネブー

【受賞歴】
第04回ワシントンD.C.映画批評家協会賞:作品賞・監督賞

【ストーリー】
 1972年9月5日未明、ドイツ、ミュンヘン。オリンピック開催中の選手村に、パレスチナゲリラ”ブラック・セプテンバー 黒い9月”が侵入。イスラエル人の選手、コーチ、大会役員11人が人質となり、世界中が見つめる中、全員が死亡する事件が起きる。イスラエル政府は、パレスチナのテロ行為と救出に失敗したドイツ警察をはじめとする各国の対応に激怒。ゴルダ・メイア首相(リン・コーエン)は自分たちの手で首謀者へ〈報復〉することを決意する。
 その任務にイスラエル秘密情報機関”モサド”の一員であるアヴナー(エリック・バナ)が選ばれる。彼は愛国心に溢れた若者で、テロ事件の残忍さに怒りと哀しみを感じていた。任務はテロ首謀者と目されるパレスチナ人11名の暗殺。ヨーロッパ中に点在する彼らを探し出し、ひとりずつ消していくのが目的だ。そしてこの任務は極秘に行なわれるため、家族も祖国も捨てなければならない。「断ると生きてはいけない」 アヴナーは引き受けるかどうか悩んだ末、”正義”のため、命令に従うことを決める。妊娠7ヶ月の妻ダフナ(アイェレット・ゾラー)にさえ、事情を説明できないまま…。
 上官エフライム(ジェフリー・ラッシュ)の指示のもとヨーロッパへ渡ったアヴナーに与えられたのは、スイス銀行の口座に用意された多額の資金と、4人の仲間だった。南アフリカ出身の車輛のスペシャリスト、スティーヴ(ダニエル・クレイグ)、物静かで几帳面な後処理のスペシャリスト、カール(キアラン・ハインズ)、おもちゃ職人でもあるベルギー人の爆弾スペシャリスト、ロバート(マチュー・カソヴィッツ)、そしてドイツ系ユダヤ人で文書偽造のスペシャリスト、ハンス(ハンス・ジシュラー)。アヴナーをリーダーとする5人はジュネーヴで出会い、結束を固める。
 最初の標的はローマにいた。多額の資金をもとに、「千夜一夜物語」の翻訳本を手に民衆の前で演説するワエル・ズワイテルを見つけ出したアヴナーたちは、男を尾行して自宅前でひとりになる時を見計らって、射殺する。それぞれの役割を果たした5人は、初任務の成功を素直に喜ぶ。
 フランス人の情報屋ルイ(マチュー・アマルリック)から、次なる標的マフムッド・ハムシャリがパリにいることを知るアヴナー。ロバートが自宅の電話に爆弾を仕掛ける。ハムシャリが受話器を取った瞬間に、起爆スイッチを入れて爆破する手筈だったが、外出していたはずの彼の娘が帰宅したことに気づかず、誤って電話を鳴らしてしまう。受話器を取る娘。カールが直前に気づき、ロバートは間一髪で爆破を止める。標的以外の、第三者の殺害は許されないのだ。娘の外出を確認して、改めて作戦を遂行するアヴナーたち。パリの街に爆破音が響く。
 ふたりの暗殺が終了した時点で、アヴナーは仲間にも内緒で一時帰国する。妻の出産に立ち会うためだ。産まれたばかりの娘を抱き、一時の幸せを噛み締めるアヴナーだが、今のままでは家族を危険に晒すのではないかと考え、妻にニューヨークへの移住を切り出す。
 再びヨーロッパへ戻ったアヴナーは、ルイから情報を買い、地中海に浮かぶキプロス島に向かう。次の標的となるフセイン・アン=シール(PLOのKGB担当連絡官)はオリンピック・ホテルに滞在していた。ベッドに爆弾を仕掛け、隣の部屋にチェックインしたアヴナーは、夜中バルコニーでフセインと言葉を交わす。彼は明るく優しいごく普通の男だった。任務に対する感情が揺らぐアヴナー。躊躇しつつも爆破の合図を送るが、予想以上に強い爆風が彼をも襲い、危うく死にかける。誰かが爆破レベルを変えたのか…?
 ルイから3人の標的、アブ・ユセフ(PLO最高幹部のひとり)、ケマル・アドワン(ファタハ派破壊工作責任者)、カマル・ナセル(PLO公式スポークスマン)がイスラエルの隣国レバノンのベイルートにいる情報を渡されたチームは、エフライムと交渉の上、モサドと陸軍の合同でアジトに乗り込む壊滅作戦を実行する。ターゲット以外を殺すなというアヴナーの指示もむなしく、多くの犠牲者が…。深夜の倉庫街に銃声が響き渡る。
 パリに戻ったアヴナーはルイの父であり、情報屋の黒幕でもある”パパ”なる人物(ミシェル・ロンズデール)に会う。「我々は情報を売っている。だが政府とは仕事はしない。憶えておけ」
 標的ザイード・ムシャシ(KGBと黒い9月の連絡係)の情報を得たチームはアテネ入りするが、隠れ家でパレスチナ系テロリストと鉢合わせしてしまう。その場の機転でなんとかことを納めたアヴナーは、彼らのリーダーと深夜語り合う。理想を語るパレスチナの若者に対し、アヴナーは現実的な意見しか言うことができなかった。
 部屋のテレビに仕掛けた爆弾でムシャシ暗殺を企むが、なぜか装置が起動しない。焦る仲間たちを尻目にハンスは自ら手榴弾を部屋に持ち込み、標的を爆死させる。逃走中、KGBと前夜に出会ったパレスチナ系の若者たちにも銃を向けることになるアヴナーたち。アジトに戻った5人は激しく口論する。爆破の不手際やハンスの勝手な行動に対してだけではなく、彼ら自身が自らの任務に不安や疑問を抱え始めていた。それでも計画は続けなければならない…。
 ミュンヘン・オリンピックのテロ事件を計画した張本人とされる最大の標的アリ・ハッサン・サラメがロンドンにいる情報を得たアヴナーたちは、雨降る夜に暗殺を計画するが、アメリカ人の酔っ払いの妨害で中止せざるを得なくなってしまう。ホテルに戻ったアヴナーに、カールは邪魔をしたアメリカ人たちがCIAだったのではないか、と告げる。今や誰が敵で誰が味方なのか?
 その晩、アヴナーはホテルのバーで出会った魅力的な女性ジャネット(マリ=ジョゼ・クローズ)の誘いを断るが、代わりにカールが部屋へ招き入れる。心が激しく揺れるアヴナーは妻に電話をかけ、娘の声を聞き涙する。「パパだよ…この声を忘れないで…」
 その後、向かいの部屋で女の香水の香りに気づき、すでにベッドで息絶えているカールを見つける。ルイの情報で女が殺し屋だと分かったチームは、初めて任務や正義とは別に、仲間を殺された怒りの感情だけで報復を決意する。女が住むオランダへ向かう駅でロバートがアヴナーへ問いかける。「俺たちは高潔な民族なはずだ。その魂を忘れるなんて…」。ロバートと別れたアヴナーたちは答えを見つけられないまま、女を暗殺する。
 夜、散歩に出たハンスが戻らず、川辺のベンチで死体が見つかる。いつの間にか狙う立場から狙われる立場になったアヴナーは夜も眠れず、姿のない恐怖に怯え始める。いつか突然、誰かに殺されるかもしれない…。皮肉にもチームを離れたロバートは、自ら作った爆弾の誤爆により命を失う。
 正義と信じた任務を遂行しながら、見えない恐怖と狂気の中を彷徨い、もがく男たち。「私たちは正しいのか?」「果たしてこの任務に終わりはあるのか…?」