L'AFFAIRE FAREWELL
原題:L'AFFAIRE FAREWELL
製作年:2009年
日本公開:2010年07月31日
製作国:フランス
言語:フランス語・ロシア語・英語
画面:アメリカンヴィスタ
音響:ドルビーSRD
上映時間:113分
配給:ロングライド
宣伝:テレザ
スタッフ
監督:クリスチャン・カリオン
脚本:クリスチャン・カリオン
プロデューサー:クリストフ・ロシニョン
        ベルトラン・フェーヴル
        フィリップ・ボファール
原案脚本:エリック・レイノー
原作:「ボンジュール・フェアウェル」セルゲイ・コスティン
音楽:クリント・マンセル
プロダクション・マネージャー:ステファン・リガ
撮影:ウォルター・ヴァン・デン・エンデ
編集:アンドレア・セドラツコヴァ
美術:ジャン=ミシェル・シモネー
サウンド・エンジニア:ピエール・メルテン
音響デザイン:トマ・デジョンケール
録音:フローレン・ラヴァレー
キャスティング:スージー・フィギス
キャスティング(仏):ジジ・アコカ
衣装:コリンヌ・ジョリー
メイクアップ:マビ・アンザローヌ
キャスト
グリゴリエフ大佐:エミール・クストリッツァ
ピエール・フロマン:ギヨーム・カネ
ジェシカ:アレクサンドラ・マリア・ララ
ナターシャ:インゲボルガ・ダプコウナイテ
シューホフ:アレクセイ・ゴルブノフ
アリーナ:ディナ・コルズン
ミッテラン大統領:フィリップ・マニャン
ヴァリエ:ニエル・アレストリュプ
レーガン大統領:フレッド・ウォード
ハットン:デヴィッド・ソウル
フィニーCIA長官:ウィレム・デフォー
イゴール:エフゲニー・カルラノフ
アナトリー:ヴァレンチン・ヴァレツキー
ストーリー
 1981年4月、モスクワ。東西冷戦終結、そしてソ連崩壊という、世界の基軸が180度転換してしまう日から、およそ8年前―――。

 KGBの幹部、セルゲイ・グレゴリエフ大佐(エミール・クストリッツァ)は、傍から見たら順風満帆な生活を送っていた。情報処理の責任者として国の中枢にいるという自負と充実、それに見合った収入とその生活ぶり、美しい妻(インゲボルガ・ダプコウナイテ)と反抗期を迎えてはいるが優秀な息子の存在。国家のエリートとして充分に満足できる生活のはずであったが、それゆえ愛してやまない国の行く末に不安を感じていた。例えば人類で初めて宇宙に行ったロシアは、いまは行き詰っている。それは彼の立場であるからこそ嗅ぎ取れる異臭のようなものとなって自身を苛んでいくのだった。”世界を変える―”。ソ連という東側の情報の中枢にいれば、たったひとりでもそれは不可能ではないように思われた。いや実現しなければ、ソ連の未来も、そして愛する息子イゴールの未来も枯れて、干上がった河のようになるのは明らかだった・・・。

 そんなある日、グリゴリエフはフランスの家電メーカー技師、ピエール・フロマン(ギヨーム・カネ)との接触に成功する。フランスの国家保安局DSTから、彼の上司ジャックを経由しての接触だった。プロとの接触ではないことに失望したグリゴリエフだったが、彼に対し奇妙な親近感を覚え、重要な情報を手渡す。そこにはスペースシャトルの設計図やフランスの原子力潜水艦の航路図などがあった。一介の技術者であったピエールは、その情報の壮大さに目を見張り興奮する。しかしその無防備さから書類を妻のジェシカ(アレクサンドラ・マリア・ララ)にも見せてしまい、彼女から非難される。すぐにそれを処分すべきだ、と。幼い子供を抱える母としてのごく自然の反応に、 ピエールは曖昧な返事をするしかなかった。それほどにその情報は平凡な日常を送るピエールには魅力的に映ったのだった。

 その頃アメリカは、フランスが左翼勢力であるミッテランが政権を獲得したことに苛立ちを覚えていた。81年カナダでのオタワ・サミットでレーガンはミッテランに共産主義者の大臣起用に憂慮を示し、組閣の見直しを求める。それに対しミッテランが差し出したのがグリゴリエフの情報だった。NASAやCIA、ホワイトハウスで働く15名のアメリカ人スパイの情報が記された情報・・・。書類の表紙には”フェアウェル(いざ、さらば)”というコードネームが記されていた。

 グリゴリエフとピエールの関係は、少しずつ縮まっていった。かつて5年ほどフランスに滞在したことでフランス語への郷愁、あるいは国への背任行為であるこのスパイ作戦をひとりで遂行しなければならないことの孤独感が、よりグリゴリエフをピエールに近づけるのだった。一方ピエールは、そうした危険な行為に金銭的な見返りをいっさい求めないグリゴリエフの清冽さと強靭な精神に惹かれていく。グリゴリエフがピエールに渡す情報は仔細であり、かつ想像を絶するような重大な機密事項ばかりだった。エアフォースワンの設計図、アメリカの防空体制、果てはホワイトハウスの暗証番号からデリバリーの時間まで・・・。情報を盗むことで技術を促進させるしかない国の惨状がグリゴリエフにはつらかった。これから新しい世界で生きる息子には決して生きてほしくない国の姿だった。

 しかしそれだけ息子を思いやっても、そのグリゴリエフの思いはイゴールには伝わらなかった。”国家の犬”としてしか父親を見れず、公の場でブレジネフの悪口を言うなど、その年齢もあってか、日に日に父親への反抗心は強まるばかりだった。息子の好きなロックバンド、クイーンのカセットテープとウォークマンを、ピエールを通して手に入れることでイゴールとの距離もわずかに縮まるものの、不倫相手との抱擁を見られ、ますます彼は息子との関係に悩むばかりの日々だった。そんな父親としての悩みを分かち合えるのも、ピエールだけであった。”狼の死”という詩に自らを重ね合わせ、自身の未来を予知し、それを吐き出せる存在も彼しかいなかった・・・。

 そんななか、決定的な情報がグリゴリエフの手元に届く。”X部隊”の書類だ。国外で活動しているトップクラスの情報部隊の情報。その書類を西側に渡せば体制が崩壊するのは明らかだった。世界が変わることも。そしてそれはついにピエールへ渡された。

 イギリス、アメリカ、西ドイツのトップクラスの諜報員がつぎつぎに逮捕されていった。ソ連は体制を少しずつ崩壊させていく。そんななか国内では新体制が生まれようとしていた。新書記長ゴルバチョフが提言する改革=ペレストロイカというスローガンの下に。世界が、時代が、大きな変化を遂げようとしていた。

 しかしグリゴリエフはその存在を突き止められ、当局に逮捕される。危機を感じ取ったピエールは、800キロの雪道をフィンランドへの国境に向けて家族とともに車を走らすのだった。グリゴリエフは国家の犠牲となっていくのか、西側が救出するのか――。車を猛スピードで走らせても、ピエールはその不安を拭うことはできなかった。

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